宙組公演「翼ある人びと」

ポスターの画像

 私の中で今まで観た宝塚歌劇団の公演の中でも1位、コンサートを含めた舞台の中でも歴代2位なのが、宙組公演「翼ある人びと」です。主役ヨハネス・ブラームスを朝夏まなとさん(まぁくん)が演じています。

翼ある人びと公式HP

2021年宝塚歌劇団の主力脚本家の上田久美子さんの脚本・演出です。私は上田久美子さんの脚本・演出作品では「翼ある人びと」が一番好きです。上田久美子さんの作品はどれも好きですがw。

私は2014年2月9日シアタードラマシティの16時公演で観ました。

美しく悲しいストーリーと魅力的な登場人物、朝夏まなとさんの素晴らしい歌とダンスで宝塚歌劇団の舞台としてまず素晴らしいのです。あと、音楽ファンならクララ・シューマン役の伶美うららさんの見た目がクララ・シューマン本人に実に似ている事にも驚かれるかもしれません。

しかし、宝塚歌劇団的な素晴らしさ以外に、実は3つの楽しみ方が隠されています。3つ目は2021年だからこそ語れる事ですが(笑)

1 朝夏まなとさんの実歴史に近いストーリー

2 普遍的なテーマ、特にクリエイター系には避けて通れないテーマを扱っている

3 だいもん(望海風斗さん)に続くストーリー

 1 「そらへ行くんだ!」~まぁくんへの言葉

クライマックスでの台詞です。これは花組時代からまぁくんを追いかけてきたファンにはたまらない言葉です。もちろん、「空へ行くんだ!」なのですが、「宙(そら)へ行くんだ!」で、宙組を指している事は確実です。ここでこの台詞を言わせた脚本家 上田久美子さんは天才だと思いました。

 朝夏まなとさんは宙組元トップスターで、宙組時代、圧倒的なダンス力(正確にはダンスだけでなく所作全般)と、伸びやかな歌声、持ち前の明るさで人気を得ました。しかし、元々は花組で若手~中堅時代は苦しい時代を過ごしました。

真飛聖さんの超絶ファンの妻からの受け売り

 花組元トップスター春野寿美礼さん、真飛聖さんをはじめとして、当時の花組は壮 一帆さん、愛音 羽麗さん、未涼 亜希さん、華形 ひかるさん、など当時の花組は分厚い男役層だったのです。

 

 その中で、朝夏まなとさんは若手~中堅として過ごしました。その中で、「花男」らしさとは何なのか?「花男」らしくならなくては!「花男」を目指した先にあるものは?と悩み苦しんだ日々だったようです。

印象的だったのが先日CSテレ朝チャンネル1で放送された歌劇のプリンシパル

https://www.tv-asahi.co.jp/ch/contents/variety/0485/

での小池修一郎さんとの対談です。花組中堅時代、朝夏まなとさん自身苦しかったと述べられていました。転機となったのは宙組への組替です。宙組での初舞台「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」でキルヒアイスを好演、その後のモンテクリスト伯でもフェルナンを好演、妻曰く「花組時代のまぁくんとは全く別人」と驚いていました。

 「翼ある人びと」はこの花組から宙組の朝夏まなとさんに近いものになっています。こういう楽しみ方ができるのは宝塚歌劇の特徴の一つです。注目してほしいのはベートーヴェン?という役がある事です、このベートーヴェン?が花組の春野寿美礼さん、真飛聖さんなど、まぁくんが理想とする花組男役だと理解するととても分かりやすい話になります。そして、そのベートーヴェン?のラストシーンは元花組ファンの妻はいつもボロボロ泣いてしまいます。

2 登って行ったその先にあるものは?

 クリエイター系に限らず、誰か目標とする方がいる場合、その方を目標に進んでいきます。しかし、どこかでこういう事を考えるようになります。

自分は誰かの劣化コピーではないのか?

自分が新しく作り出すものは、もはや価値はないのではないのか?

劇中ベートーヴェン?がこう囁きます

お前が私の影なのだよ

クリエイター系にとっては実に根源的な問いですね、「翼ある人びと」が革新的な答えを出しているのではないのですが、普遍的な問いをテーマにしている事は間違いありません。

だいもんのサヨナラ公演がベートーヴェンである事

 だいもんのサヨナラ公演はベートーヴェンをテーマにした公演でした。「翼ある人びと」を観た人なら、だいもんがベートーヴェンを選んだ理由の一つに「翼ある人びと」がある事はすぐに分かったと思います。同じ上田久美子さんの脚本ですしね。翼ある人びとにも登場するベートーヴェンを選ぼう!と思ったのでしょう。

 朝夏まなとさんと望海風斗さんは一期違いで花組時代苦楽を共にしていました。この絆はお二人の対談番組で感じ取れます。上に書いた

「花男」らしさとは何なのか?「花男」らしくならなくては!「花男」を目指した先にあるものは?

という問いは望海風斗さんも持っていたに違いありません。

「まぁだい」で理想の「花男」を!と思っていたのでしょう。

宝塚では「まぁだい」は実現しませんでしたが、エリザベートのガラコンサート宙組2016年版でルキーニを望海風斗さんが演じ、カーテンコールで朝夏まなとさんが望海風斗さんに話を振ったときに言葉少なながらも「こんなに早く一緒に舞台に立てるとは」と話されていたのが感動的でした。






  

投稿者プロフィール

maido
maido
模型工房M代表。
模型好き。カメラ好き。宝塚歌劇好き。
各模型雑誌で掲載多数。
艦船模型、飛行機模型、AFV模型などプラモデル全般の制作代行も承っております。製作代行のご案内ページは現在製作中です(2024年4月1日)

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